15/03/03

メーカー直販

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昨日、お客様Nさんに興味深いものを見せて頂きました。「CANYON」というドイツのブランドのバイクです。当店で販売したものではありません。Nさんが通販で買ったバイクです。送られてきた箱入りの状態で見せてくれました。
普通なら「俺の店にそんなもの持ち込むんじゃねェ!」と叩き出すところですが、Nさんは超お得意様なのでそんなこと言いません。それに私もキャニオンの配送状態に興味があったのです。
キャニオンはスポーツバイクブランドとしては業界で初めて「メーカー直販」の販売形態を取り入れたブランドです。「キャニオンはメーカー直販」と最初に聞いたときは「成り立つわけない、やれるもんならやってみな」と思いました。スポーツバイクは組み立て・調整にそれなりの知識・技術・工具が必要だからです。しかし昨日、このキャニオンのバイクを箱から出してちょっと危機感を覚えました。
とても完成度の高いパッケージでした。ハンドル・前輪・シートポスト・ペダルを組み付ければ完了です。ヘッドやクランクやブレーキにガタは無く、Di2変速も微調整は澄んでおり、自転車屋の出る幕ありません。分厚いマニュアルには細かく説明が載っており、トルクレンチまで付属しています。車輪の脱着やエア充填や乗車ポジション調整も分からないようなビギナーには難しいかもしれませんが、中級者以上なら難なく組み立てられてしまいます。Nさんはフレームからロードバイクを組み立ててしまうような人なので、開梱してから写真の状態にするまで15分も掛かりませんでした。
スポーツバイクは買ってからも調整やポジション変更やメカトラブルが起きるものですし、趣味性の高いものなのでパーツ交換・カスタマイズ・チューニング・定期オーバーホールには我々専門店の技術が必要です。またスポーツバイクはサイクリングイベント・パンク修理講習・フィッティング相談など”ソフトウェア面”でのケアも大事なので「専門店は安泰」と思っていました。しかしこのキャニオンのように「高品質なメーカー直販形態」が広まってゆくと我々小売店もうかうかしてられません。街の電気屋さんが家電量販店に潰され、家電量販店がAmazon・楽天などのネット通販に潰されてゆくのと同じように、自転車小売店も淘汰されてゆくかもしれません。
新車が届いて嬉しそうなNさんを見ながら、危機感とか意識改革とか全然別のことを考えていたじて吉です…

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